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December 07, 2011

PB、本格成長の時代へ突入か?

   ここへ来て、大手小売業、食品スーパーマーケットがPBの拡充に入り始めた。12/3の日経新聞に「PB「高級」「格安」幅広く」という見出しで、大手小売業がPBの品揃えの幅を広げるとの記事が掲載された。小見出しは、「イオン、「半額品」800品目へ」、「セブン&アイ、高価格品、5倍に」、「メーカーの戦略左右、PB受託生産、成長の糧」であり、大手小売業、食品スーパーマーケットがPBの拡充に入るとの内容である。また、12/5の日経流通では、バローの社長、田代正美氏のインタビューが掲載されているが、その中で、写真入りで「度肝を抜く低価格」18円のPBの豆腐が取り上げられており、バローもPBをさらに強化してゆくとのことである。

   本来、PBはインフレ時にディスカウント価格として登場し、NBとの価格差で存在感を際立たせるのが基本戦略であるが、現在は、中長期的にデフレが進行しているにもかかわらず、大手小売業、食品スーパーマーケットがPB開発に力を入れているのが実情である。その理由の一端が、12/5の日経新聞の1面トップ記事に掲載されている。見出しは、「デフレ経済、実感とズレ」であり、小見出しは「食品など必需品値上げ」、「テレビなど大幅値下げ」、「物価が「二極化」」である。

   記事の中では財・サービス別の消費者物価の図が掲載されているが、これを見ると、家電などの耐久消費財の1997年を100とした場合、右下がりに直線上に急角度で下がっており、さらに、衣料などの半耐久消費財もなだらかな下げが見られる。これに対して、食品、ガソリンなどの非耐久消費財はむしろ上昇傾向が見られるのが実態である。また、サービスもほぼ同じ傾向で上昇傾向が見られ、消費者物価はまさに2極化しているのが実態といえる。さらに、これを裏づけるように、記事の中では、内閣府の10月の消費動向調査で、消費者が1年後の物価見通しは「上昇する」との回答が69.5%と大半を占めたとのことである。消費者の感覚はデフレではなく、インフレであるといえ、実際、消費者物価指数も、こと非耐久消費財(食品、ガソリン等)ではその傾向を示している。

   したがって、消費者と直接接している大手小売業、食品スーパーマーケットが消費者の意識を感じ取り、PBの拡充に動くのもうなづける話である。また、セブン&アイが高価格品のPBに力を入れるのも理に適っており、全体としてデフレ傾向が鮮明であるので、このような状況下では付加価値の高い商品を強化することで、平均単価を引き上げ、金額PI値を維持しようとする政策が課題となる。その意味で、高価格品をPB化することにより、全体の平均単価を引き上げることにつながり、デフレとインフレ双方に配慮した政策といえ、絶妙なタイミングでのPB戦略といえよう。

   さて、大手小売業、イオンとセブン&アイのPB戦略であるが、日経新聞によれば、「イオンはメーカー品より5割前後安く、主力PB「トップバリュ」より低価格の「ベストプライスbyトップバリュ」の品目数を、来年3月までに現在の約300から800にする。」という。また、「通常、PBはどの店も価格は一律だが、ベストプライスは店ごとの判断で価格を変更する。競合店の動向を見ながら値下げし集客力を高める。」とのことである。さらに、「一方で食材や産地にこだわった「トップバリュセレクト」も2014年2月までに現在の5倍の500品目に増やす。」とのことであり、価格よりも価値を重視したPBの強化も同時に行うという。

   一方、セブン&アイであるが、「高価格品PB「セブンゴールド」を13年2月までに30品目に拡充する。」という。このセブンゴールドは「主力PB「セブンプレミアム」より価格が2倍以上高いが、高品質の原料や高級レストランの調理方法を取り入れたのが特徴。」そして、「セブン-イレブン・ジャパンやイトーヨーカ堂が販売し、数億円にとどまるゴールドの売上高を14年2月期に100億円以上に伸ばす。」とのことである。

   また、この記事の中では、ヤオコーが冷食PBを4倍の80品目に拡充、日本生活協同組合連合会も主力PBより1から2割安い「コープベーシック」を1割増の280品目に増やすとのことであり、大手小売業だけでなく、食品スーパーマーケットもPBの拡充に入る動きが見られるという。さらに、記事の中では、これらのPBを受託生産するメーカーが増えているとのことで、中には、これを糧に急成長しているメーカーもあるという。

   このように、本来デフレ化では価格そのものが下がってゆくので、PBとNBとの価格差が縮まり、PBの存在価値が薄れるところであるが、実際のPBの動向はむしろ逆、より、大手小売業、食品スーパーマーケットがPB戦略を拡充しはじめているといえる。その背景には、先に見たように、耐久消費財(家電等)、半耐久消費財(衣料等)に対し、非耐久消費財(食品、ガソリン等)が正反対の動きをしており、食品はデフレよりもインフレ傾向を示していることが大きいといえよう。したがって、経済全体はデフレ基調で進むものと思われるが、こと食品はむしろインフレ気味で推移する可能性が高いといえ、ここにPBが注目される理由があり、今後、食品スーパーマーケットとしては再び価格競争の激化が予想されるといえよう。

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