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December 06, 2011

リフト値を科学する!

   リフト値はID-POS分析の世界では広く使われている指標であるが、意外に、その本質は未解明な部分が多い。そもそも、その発祥段階がID-POS分析ではなく、通常のPOS分析であることもあり、ID-POS分析でのリフト値との区別がつかなくなり、混同されている点もあると思われる。そこで、ここでは、ID-POS分析の観点から、改めてリフト値を再検討し、その本質を掘り下げてみたい。結論からいえば、従来のリフト値はID-POS分析のリフト値にすべて包み込まれる関係にあり、リフト値の本質を理解するには、ID-POS分析のリフト値を理解することが先決である。

   リフト値がID-POS分析以前に活用された要因は、データウェアハウスの時代が先に到来したためであるといえる。時期は1990年代、いまから約20年前ぐらいとなるが、この頃、ウォルマートが本格的にデータウェアハウスの導入に踏み切り、膨大なPOSデータの分析に着手する。その大量データ分析の一環として、併売分析なども行われ、あの伝説ともなった「ビールとオムツ」の話が生れることになるが、これが恐らく、リフト値が小売業で注目される最初のキッカケといえよう。もちろん、この時代にID-POS分析が本格化していたわけではなく、ウォルマートはいまでも、本格的なID-POS分析はしていないので、ID-POS分析のリフト値ではなく、通常のPOS分析のリフト値、すなわち、レシートのリフト値であるといえる。

   では、レシートのリフト値とIDのリフト値とはどう違うかであるが、すべての分析をID客数で見るか、レシート客数で見るかの違いである。さらに、リフト値は双方から分析することにより、新たなリフト値が生れる。通常リフト値というと、併売分析をもとに同時購買のリフト値を算出するが、この時点でレシートのリフト値が前提となっている。なぜなら、同時購買は1つのレシートに同時に対象商品と関連商品が入っているレシートのことであり、ID客数では把握できない分析であるからである。ID客数では、レシートにかかわらず、購入全レシートの全購入商品を見るために、同時購買されているかどうかは判断がつかないからである。したがって、ID客数では、同時併売も含む、期間併売が分析対象となる。一方、レシート客数では、期間併売がID客数が把握できないため、判別が不能であり、レシート客数からは、期間併売が全く把握できない。

   したがって、同時併売と期間併売はレシート客数とID客数、双方の分析を通じて得られる指標であるといえ、あい補い合う関係にあるといえる。そして、この2つのリフト値を分析することで、双方のリフト値に同時購入の場合のリフト値、期間購入の場合のリフト値の2つのリフト値、合計、4つのリフト値を算出することが可能となる。これが、ID-POS分析時代のリフト値であり、この4つのリフト値は、ID客数だけからでも、レシート客数だけからでも算出することはできず、双方があいまってはじめて算出される、まさに、ID-POS分析ならではのリフト値といえる。

   そして、リフト値は、これで終わらない。まだ先がある。売上金額、売上数量への拡張である。これは、レシートの中身をさらに掘り下げ、対象商品、関連商品の売上金額、売上数量の同時併売、期間併売の数値を算出し、そのリフト値を算出することである。これにより、ID客数のリフト値2つ、レシート客数のリフト値2つに加え、売上金額のリフト値2つ、売上数量のリフト値2つが算出でき、合計8つのリフト値が算出される。

   では、ここから何をリフト値に期待するかであるが、従来のPOS分析ではリフト、すなわち、対象商品を持ちあげるために、どの関連商品が最も効果があるかを見ているが、何を持ち上げるかが不明確であった。それが、ID客数のリフト値により、顧客IDを増やす商品の選定、レシート客数のリフト値により、購入回数を増やす商品の選定、同様に、売上金額を増やす商品の選定、売上数量を増やす商品の選定へと、何がを特定できることになる。また、同時か期間かが判別でき、同時購入していない関連商品でも期間購入している商品であるかもしれず、同時購入だけでは見えない領域をもマーチャンダイジングの対象とすることができる。

   さらに、これをID客数の属性、すなわち、性別、年齢、顧客ランクなどに分割すると、関連商品との関係を掘り下げることが可能となり、特に、Sランクの顧客のみのリフト値を算出することにより、A、B顧客と明らかに有意差があれば、S顧客特有のマーチャンダイジング戦略を構築することもできる。

   このように、リフト値はまだまだID-POS分析の中でも研究開発が未開拓の分野であるといえ、基本は同時、期間の2つであるが、これが、ID-POS分析になると、ID客数、レシート客数、売上金額、売上数量の4つに分かれ、2×4=8個となる。さらに、これがIDの属性にまで踏み込めば、2倍、3倍と増えてゆくので、いくらでも、自由にリフト値をつくり上げることができ、それぞれのリフト値を応用したマーチャンダイジング戦略をつくることが可能となる。また、ここでは言及しないが、通常リフト値は割って算出する指標であるが、これを引き算で算出するリフト値もあり、単に深めるだけでなく、次元の違うリフト値をつくることもでき、リフト値は今後、ID-POS分析の新たな研究領域を広げ、新たなマーチャンダイジング戦略をつくってゆくことになろう。

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