アークス、2012年2月期、第3四半期決算、増収増益!
アークスが1/6、2012年2月期、第3四半期決算を公表した。結果は、売上高2,395.56億円(6.6%)、営業利益72.33億円(10.8%)、経常利益77.39億円(8.6%)、当期純利益116.25億円(187.5%)となり、増収増益、特に、利益が大幅な増益となる好決算となった。食品スーパーマーケットの2月期決算企業は、今期から適用された資産除去債務会計基準の適用があり、当期純利益はプラスの企業が少ないが、アークスは、逆に、異常値となった。これは、資産除去債務会計基準の適用に伴う影響額としては、5.69億円を計上しているが、今期はユニバースを完全子会社化したことにより、負ののれんが83.20億円発生したためである。
それにしても、負ののれんが当期純利益を押し上げるとは興味深いことである。のれんとは、おもしろい言葉であるが、今回アークスがユニバースを買収した金額とユニバースの純資産との差がプラスであれば、通常ののれん、逆に、マイナスとなり、純資産が買収金額を上回れば負ののれんとなり、特別利益に計上することになり、これが、今回は83.20億円という巨額の金額になったために、大幅な当期純利益の増加となった。また、これに連動し、当然、純資産も917.81億円(前期決算時671.68億円)と大幅に増加、さらに、資産の有形固定資産960.86億円(前期決算時751.42億円)と増しており、これ以外にも、財務内容が大きく変化している。結果、自己資本比率も57.98%(昨年56.7%)と上昇した。それだけ、M&Aは財務構造を大きく変えるインパクトがあるといえ、単に売上高が増加するだけでなく、財務面でも様々な変化をもたらすことになる。
さて、このような状況の中で、アークスのキャッシュフローであるが、営業活動によるキャッシュフローは97.17億円(昨年65.84億円)と大きく増加した。ちなみに、負ののれんはキャッシュフロー上では-83.20億円となる。これは、当期純利益にすでに計上されているので、差し引いた形であり、実質、負ののれんにおけるキャッシュの増加はないといえる。したがって、キャッシュフローの改善は、負ののれん以外の当期純利益、仕入れ債務の増加等が要因である。
そして、この増加したキャッシュをどのように配分したかであるが、まずは、投資活動によるキャッシュフローへは47.71億円(-19.78億円)と、むしろプラスになっている。これは、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による収入が64.56億円発生したためである。そこで、新規出店関連への投資、有形固定資産の取得による支出を見ると、-17.36億円(-24.30億円)であり、削減しており、しかも、営業活動によるキャッシュフローの17.86%(昨年36.90%)であるので、半減、投資を抑制したといえよう。
次に、財務活動によるキャッシュフローであるが、-65.96億円(昨年-58.37億円)であり、営業活動によるキャッシュフローの67.88%(昨年88.65%)、昨年同様、ここにキャッシュを重点配分している。その中身であるが、有利子負債への返済が-41.03億円(昨年-43.28億円)であり、負債の圧縮である。結果、有利負債は146.79億円(前決算時163.28億円)と削減され、これが自己資本比率の改善に結びついたといえよう。
したがって、アークスはM&Aを成長戦略に活かしながら、同時に財務改善へキャッシュを振り向け、財務改善にも踏み込み、同時に財務の安定化をはかるという理想的なM&A戦略を達成したといえよう。それだけ、ユニバースの財務内容が堅実であったということであり、この財務内容を見る限り、アークスのパワーが一段と増したM&Aであったといえる。
さて、一方で、営業利益が2桁の増加となった要因であるが、原価、経費面から見てみたい。まずは、原価であるが、76.89%(昨年77.15%)と0.26ポイント改善している。結果、売上総利益は23.11%(昨年22.85%)となった。これに対して、経費の方であるが、20.08%(昨年19.93%)と0.15ポイント上昇している。これもM&Aの影響といえ、生鮮食品の強いユニバースが連結されたことで原価を下げ、粗利が改善したが、一方で、経費比率は上昇したといえる。ただ、結果、差し引き、商品売買から得られる利益、マーチャンダイジング力は3.03%(昨年2.92%)と上昇しており、収益は改善している。アークスはその他営業収益が計上されていないので、マーチャンダイジング力=営業利益となり、これに売上高の上昇があいまって、営業利益が2桁増となった。
このように、アークスの2012年2月期、第3四半期決算は増収増益の好決算となった。ユニバースを完全子会社化したM&A効果が大きいといえる。特に、財務面では、キャッシュフローが増大したことより、その配分を財務改善に思い切って配分することが可能となり、財務の安定化をはかることができたことが大きい。一方、やや懸念されるのは、これまでディスカウント戦略を強く打ち出してきたアークスの原価が下がり、利益は改善されたが、価格競争力に影響がでないかである。ただ、ユニバースの強い生鮮食品のノウハウが今後浸透し、生鮮食品の強化が全社的に進むものといえ、構造変化が起こる可能性も高いといえよう。今後、アークスがユニバースとの一体化をどう進め、本体の活性化にどのように活かしてゆくのか、その動向に注目である。
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