ウォルマート、2012年1月、第4四半期、EPS1.51ドル!
ウォルマートが2/21、2012年1月度の第4四半期決算を公表した。ウォルマートの決算は日本の小売業の決算と違い、まずは、冒頭にEPSがくる。今回の決算でも、「・・earnings per share from continuing operations (EPS) of $1.51,・・」であり、EPSがこの四半期のみで1.51ドルになったことをはじめに報告している。さらに、これは四半期であるが、通年については、第4四半期決算の様々なコメントの後であり、ここでも、「Full year EPS was $4.54, compared with last year’s EPS of $4.18. EPS included approximately $0.05 in net benefits this year and $0.11 last year.」と、EPSの報告が先である。いかに、決算とは株主に対してのものであるかが、よくわかる決算発表であり、日本とは決算の意義、位置づけが違うといえ、改めて、株式会社の決算とは何かを考えさせる。
さて、ここからは日本式、ウォルマートの通年の決算結果であるが、まずは、売上高であるが、ウォルマート全体では4,438.54億ドル(5.9%増)であり、堅調な伸び率である。その中身であるが、ウォルマートは3つの部門に分けて、売上高を管理しているが、米国のスーパーセンター、ディスカウントストア、食品スーパーマーケット等のウォルマート部門は1.5%増(構成比59.52%)と伸び悩んだ。伸びたのは海外部門であり、15.2%増(構成比28.35%)と2桁の伸びである。いかに、ウォルマートが海外に支えられているかがわかる。もちろん、この中には、日本の西友も含まれている。そして、もうひとつ、サムズクラブ部門であるが、8.8%増(構成比12.11%)であり、会員制ホールセールクラブも好調な結果であった。
では、利益はどのような結果であったかを原価、経費面から見てみたい。まずは、原価であるが、75.50%(昨年75.17%)と、0.33ポイント上昇しており、結果、売上総利益は24.50%(昨年24.83%)と下がった。日本同様、アメリカでも価格競争は激化しているものと思われる。これに対し、経費の方であるが、19.21%(昨年19.42%)と0.21ポイント減少した。原価の上昇を経費の削減で補おうという意識が感じられる。それにしても、これだけ巨大な小売業であるにもかかわらず、経費比率を20%以下に抑え、しかも、昨年よりも下げており、驚異的なコストコントロールといえる。これがウォルマートのEDLP(Everyday Low Price)を支えるEDLC(Everyday Low Cost)であるといえよう。
結果、商品売買から得られる利益、マーチャンダイジング力は5.29%(昨年5.41%)と、若干下がった。そして、これに会員収入として、その他営業収入が0.69%(昨年0.69%)加わり、営業利益は5.98%(昨年6.10%)と率では若干下がった。ただ、高では、5.9%増という堅調な売上高の伸びに支えられ、4.0%増となり、増収増益の好決算となった。
やや気になるのは原価の上昇が経費の削減を上回っていることであり、ウォルマートにとっては、今後、さらにEDLPを世界中で推し進めてゆくためにも、経費の削減を一層、推し進める必要があろう。EDLPは商圏内で最も低い価格を維持し続けるため、売価が徐々に徐々に下がって行く。したがって、原価上昇の圧力がかかり、それ以上に経費を下がるか、物流改善等を踏まえ、原価交渉を通じてメーカー、卸との原価交渉が課題となる。ウォルマートがPOS開示をしているのも、ここがその目的であるといえるが、今期の決算では原価の上昇が見られることから、原価交渉は限界に近いのではないかと思われる。したがって、今後は、一層経費削減が課題となろう。
では、この決算結果を受けて、ウォルマートが今後どのような経営戦略を描いているのかをキャッシュフローをもとに占ってみたい。まずは、営業活動によるキャッシュフローであるが、242.55億ドル(昨年236.43億ドル)、約2兆円であり、すごいキャッシュである。そして、このキャッシュの投資への配分であるが、投資活動によるキャッシュフローは-166.09億ドル(昨年-121.93億ドル)であるので、約70%弱を配分しており、しかも、昨年よりも36.21%増やしており、積極的な投資を図っているといえる。
一方、財務活動によるキャッシュフローであるが、-84.58億ドル(昨年-120.28億ドル)であり、営業活動によるキャッシュフローの約35%弱であり、しかも、昨年よりも減少しており、財務改善への配分を削減、特に、自社株買への配分が大きく減少しているのがその要因である。したがって、このキャッシュの配分を見る限り、ウォルマートは攻めを重視した積極的な経営戦略を打ち出しているといえ、今期は守りよりも攻め重視に動くのではないかと推測される。
このように、ウォルマートの2012年1月度の決算が公表されたが、増収増益の好決算であり、特に、国内が伸び悩む中、海外部門に支えられたことが大きいといえよう。やや気になるのは原価の上昇が見られることであり、ウォルマートはEDLPを経営戦略に採用しているため、売価を下げ続けざるをえない宿命にあるといえ、やむをえないともいえるが、現状の原価交渉等が厳しい状況にあるものと推測される。したがって、今後、PB等を強化し、原価を維持するか、経費削減を一層すすめることが課題となる。このような中、キャッシュフローを見ると、攻めの意思が鮮明であり、今期ウォルマートは、攻撃は最大の防御、攻めに活路を見出すのではないかと予想される。ウォルマートが今後、どのような積極的な経営方針を打ち出すのか、注目である。
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