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February 10, 2012

ヤオコー、2012年3月決算、第3四半期、好調!

   ヤオコーが2012年3月期、第3四半期決算を2/5公表した。いよいよ、食品スーパーマーケット業界の決算発表も大詰め、3月期決算の第3四半期決算の公表がはじまったといえる。そのヤオコーの決算結果であるが、営業収益1,792.49億円(8.5%)、営業利益97.39億円(28.3%)、経常利益95.90億円(28.5%)、当期純利益52.02億円(23.3%)となり、増収、大幅増益、好調な決算となった。ヤオコー自身も、「特に、震災後、早い段階で平時の提案型売場への回復に努めるとともに、生鮮強化やEDLP(常時低価格販売)導入など価格対応に取り組みました。」とのことで、震災後のすばやい対応が好業績を生み出した要因のひとつであるとのことである。

   このコメントにもあるように、ここ数年、ヤオコーはEDLPを強く意識しており、価格にこだわったマーチャンダイジング戦略を模索している。ヤオコーは通常の食品スーパーマーケットと比べ、マーチャンダイジング戦略がこれまで逆をいっていたきらいがあった。通常の食品スーパーマーケットは原価を極限まで上げ、結果、売上総利益を極限まで下げ、その利益で見合うようなぎりぎりの経費コントロールを行い、利益を何とか捻出するという政策をとる。ウォルマートがその典型といえ、出店地域で最も安い価格を常に維持するEDLP戦略を採用し、それにともない、経費も極限まで下げ続け、下がれば、さらに売価を下げるというEDLPをどこまでも徹底する戦略である。

   これに対して、ヤオコーは、この第3四半期決算を見ても、EDLP企業とは対照的な収益構造となっている。その営業利益の構造であるが、原価71.17%(昨年71.33%)、結果、売上総利益、いわゆる粗利は28.83%(昨年28.67%)と、0.16ポイント上昇している。この28.83%は上場食品スーパーマーケット約50社の中ではベスト5前後に入る高さであり、いかに粗利をしっかり確保しているかがわかる。ちなみに、上場食品スーパーマーケットの中で、粗利が低い食品スーパーマーケットは20%を下回っており、約10社前後ある。それだけ、ヤオコーは付加価値追求型の典型的な食品スーパーマーケットであるといえ、EDLPとは一線を画してきたといえよう。

   また、経費に関しては、27.57%(昨年28.34%)と、0.77ポイントと大きく下がった。この経費比率27.57%は、下がったとはいえ、上場食品スーパーマーケット約50社の中ではベスト10前後と、これだけ改善してもまだかなり高めの水準である。経費比率の低い食品スーパーマーケットは20%前後であり、その差はかなり大きい。

   こう見ると、ヤオコーのマーチャンダイジング戦略は明らかにEDLPとは一線を画し、経費もかけるが、粗利も十分に確保し、付加価値を追求しているマーチャンダイジング戦略を実践してきているといえよう。そのマーチャンダイジング戦略を支えるのが、ヤオコーのNo.1部門の惣菜であり、ヤオコー得意の生鮮食品の強さ、さらには、PBをはじめとする商品開発力の高さであるといえよう。

   このようなマーチャンダイジング戦略を強く推進しているヤオコーであるが、ここへ来て、先のコメントにもあったように「世の中の変化に対応する価格ライン戦略」を打ち出し、価格コンシャス(こだわる)を強く打ち出すマーチャンダイジング戦略をとり、EDLPを取り込もうとしている。ただ、実際のこの第3四半期決算の結果は、むしろ、逆、経費は下がったが、それに見合い、原価を上げ、粗利を下げるのではなく、逆に原価を下げ、粗利を引き上げており、より付加価値を追求し、収益をさらに確保している。

   結果、商品売買から得られる利益、マーチャンダイジング力は1.26%(昨年0.33%)と、昨年よりも大きく改善しているが、その中身は、EDLP戦略を経費では目指しながら、原価では逆に、付加価値を追求し、むしろ逆に動いているといえ、奇妙な結果である。付加価値とEDLPを同時に目指す、ぎりぎりのバランスを追究しているようにも見える。そして、これに物流収入、不動産収入等のその他営業収入が4.42%(昨年4.47%)加わり、結果、営業利益は5.68%(昨年4.80%)となり、大幅な増益となった。

   このような中、新たなマーチャンダイジング戦略として、ヤオコーがポイントカードをはじめて発行した。まだ、ヤオコーの本社のある川越の店舗4店舗のみであるが、今後、検証を繰り返し、いずれ全店に展開してゆくことになろう。したがって、ヤオコーもID-POS分析の時代に入り、顧客からのマーチャンダイジング戦略を構築することになろう。これは、ここ最近進めてきたEDLP、価格コンシャスと異なる方向であり、どうバランスをとってゆくのか、今後の経営戦略がやや複雑な様相を呈してきたといえる。ちなみに、ポイント還元率は200円で1ポイント、500ポイントで500円のお買いもの券での0.5%還元である。競合食品スーパーマーケットが1.0%還元、しかも、お買いもの券ではなく、キャッシュバックを採用しているところも多く、ポイントカードの価値の打ち出しとしてはかなり弱いといえる。

   こう見ると、ヤオコーの2012年3月期の第3四半期決算は、増収大幅増益となったが、ここで、新たな経営戦略、ポイントカードを打ち出したことにより、新たなマーチャンダイジング戦略が可能となる一方、ヤオコーが、これまでの進めてきた付加価値追求の経営戦略、ここ最近のEDLPを志向した経営戦略、そして、この新たに打ち出したポイントカードによる顧客還元戦略と、やや複雑になってきており、この3つをどうバランスをとってゆくのか、今後の経営戦略に注目である。


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