カスミ、SNS(Social Networking Service)へ動くか?
食品スーパーマーケットで異変が起きつつある。2/22の日経新聞、電子版で、「ソーシャルメディアで経営改革、老舗食品スーパーの決断」という見出しの記事が掲載された。すでに、私のFacebookのウォールにも、「いいね!」を入れているので、ご存知の方も多いと思うが、興味深い内容である。特に、この経営決断をしたのが、茨城県の老舗の食品スーパーマーケット、カスミであり、しかも、その経営者、71歳の小浜裕正会長であるとのことで、2重の驚きである。これまで、SNS(Social Networking Service)と食品スーパーマーケットとはあまり関係がないのではないかと思われていた。さらに、70歳を超えたご高齢の方が、SNSに関心を示し、しかも、食品スーパーマーケットの経営戦略に組み込もうという発想自体がなかったといえる。仮に、これが何らかの形になり、さらに、カスミの経営改革につながってゆけば、画期的なことであるといえ、今後の動向が気になるところである。
記事の中では、冒頭に小浜会長のインタビュー内容が紹介されている。特に、印象深いのは、「ツィッターやフェイスブックでお客様や社員の声に耳を傾け、対話し、真の顧客志向の経営へと変革する。「ソーシャルシフト」に書かれている事例を知り、カルチャーショックを受けた。何を言ってるんだと思われるかもしれないけれど、それほど立ち遅れていた。地べたに這いつくばって汗水垂らし、お客様に頭を下げていればいいんだと、ずっと思ってやってきたから」とのことで、71歳の小浜会長がカルチャーショックを受けたとのことである。
そして、「我々はお客様の声を聴くといいながら、じつは何も聞いていないに等しかった。本質も捉えることができていない。地域の生活者との接点のあり方を根本から変えないと、過去の経験との積み上げだけではこの先、生き残るのは難しい。ただ分かってはいるけれど、どうすればいいのか。悶々(もんもん)としていたというのが正直なところです」と述懐している。カスミという食品スーパーマーケットだけでなく、日本の食品スーパーマーケットの歴史そのものともいえる71歳の小浜会長の言葉だけに、重みがある。
そして、ここからがすごい。経営者としての矢継ぎ早のアクションを起こす。「僕はフェイスブックもツイッターもやっていない。その世界はまったく疎い。けれども、本の内容が、カスミの目指すべき方向と同じだとはわかった」とのことで、社内での読書勉強会を小浜会長が先頭にたって毎週火曜日、朝7時、定例役員会の前に開いたという。参加者は定例役員会議に参加する執行役員以上の16人だという。昨年12月から、今年1月まで計7回開いたという。その時の第2回目の読書勉強会の写真が、日経新聞に掲載されているが、この時はカスミのロジステックとSNSを議論したもののようであるが、資料への熱心なメモ書きがあり、SNSを必死で理解しようとしている気迫が伝わり、臨場感あふれる写真である。
では、小浜会長は、何を狙って、カスミの全役員にSNSを勉強させたかであるが、日経新聞によれば、その狙いは2つあるとのことである。「思想を共有すること」と「役員に現場の邪魔をさせないこと」であるという。
はじめの「思想を共有すること」とは、「生活者の知識、知恵との「交流」をいかに工夫して実践するか。双方の知恵の交流からしか、新しい価値は想像できない。そのために、生活者との新しい関係を作り上げることが「ソーシャルシフト」だと思っている。何も道具を勉強したいわけじゃない。思想を勉強したかった。」とのことである。
そして、もうひとつ、「役員に現場の邪魔をさせないこと」については、「何が世の中で起きているのか。どういう手段があるのか。我々経営層が最も疎い。せいぜいメール。自分の物差しで物事も見ているから、フェイスブックの認識すらない。だから、若手がソーシャルメディアを活用した取り組みを提案しても、上層部が否定して潰しにかかる。少なくとも理解をし、邪魔をしてはならないという気持ちを役員に持たせたかった。」とのことである。そして、現在、この2月中旬、「ソーシャル推進室(仮称)」の設置を決め、具体的にソーシャルメディアをどう活用するか。社員にどう浸透させ、顧客とどう向き合うべきかを、数人のメンバーを軸に3月から検討してゆく。」とのことである。
このように71歳の小浜会長率いる、老舗の食品スーパーマーケット、カスミがこの3月からソーシャル推進室を立ち上げ、本格的にSNS(Social Networking Service)に取り組むとのことである。奇しくも、食品スーパーマーケット業界はPOSからID-POS分析の時代へと大きく舵を切り、顧客IDの購入履歴にもとづいた真の顧客の声に耳を傾けたマーチャンダイジングの構築に入りはじめている。その意味で、カスミの今回のSNSへの取り組みが、いずれ、ID-POS分析と融合し、顧客の声に基点をおいた真のマーチャンダイジングの構築、そして、経営改革につながってゆくかのではないかと思われる。カスミには、是非、SNSをとことんつきつめ、食品スーパーマーケットにとっての新たなパラダイムを切り開いて欲しいところだ。
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