産業再生機構、ダイエーへの支援を振り返る!
産業再生機構:支援決定案件
・http://www.dic.go.jp/IRCJ/ja/
・株式会社ダイエー(支援企業について):
・2004/12/28:株式会社ダイエー等に対する支援決定、2004/12/28:事業再生計画の概要、2004/12/28:スタンダード&プアーズ社宛て質問状:和文/ 英文、2005/02/24:機構法31条の確認、2005/02/28:買取決定、2006/07/28:株式の譲渡、2006/11/10 債権の譲渡及び弁済受領完了
支援決定についての機構の考え方:
・対象事業者グループは、食品売上において規模・収益性で日本を代表する位 置付けであり、ドラッグストア関連商材でも業界で有数の売上規模を誇る等、 生活必需品を取り扱う小売業として再生可能なコア事業を保有しております。
・一方、対象事業者は、過去の自社保有方式での出店方法により抱えた含み損 や、効率性に注意を払わない全国志向、必ずしも成功しなかった小売以外への 多角化・拡大路線、低価格戦略へ過度に依存した営業手法などにより本来の強 みを発揮できていません。
・機構としては、財務リストラクチャリングに加えて事業面の改革が不可欠で あると考えており、不採算店からの撤退や外部テナントの活用により改善する 総合スーパー業態のキャッシュフローを用いて、食品スーパー業態など成長分 野へ経営の比重を移していくことで、抜本的な収益改善ひいては事業の再生が 可能になるものと判断しております。
支援申込に至った経緯:
・ダイエーグループは、自社保有方式による大量出店、全国展開、事業多 角化を積極的に進め、低価格戦略による商品・業態開発を行ってきたが、 その後の地価下落による多額の含み損を抱え、消費者ニーズの変化への対 応力も不十分であった。過去 3、4 年間は財務リストラクチャリング主導に よる改革を進め、相応の効果はあったものの、依然として巨額の債務を抱 えている。また、コア事業である小売業は抜本的な収益力の回復に至らず、 事業環境の悪化等先行き営業力の回復が急務となっている。 このような状況のもと、対象事業者及び主力三行は、過剰債務を解消する とともに、事業の見直しを行い事業の再生を図るべく、産業再生機構に支 援申込をするに至った。
買取決定に係る金額等:
・対象事業者の債権の元本総額 1,020,562 百万円(A)
・買取り(上記①)に係る債権の元本額 394,336 百万円(B)
・関係金融機関等において金融支援(上記②) 等が行われる債権の元本額 626,225 百万円(A-B)
株式の譲渡の経緯:
・平成 17 年 3 月に、丸紅株式会社(以下「丸紅」という。)及び株式会社アドバン テッジパートナーズ(現アドバンテッジパートナーズ有限責任事業組合。以下「ア ドバンテッジパートナーズ」という。)(以下 2 社を合わせて「スポンサーグループ」 という。)をスポンサーとして選定し、同年 5 月には丸紅の 100%子会社である丸紅 リテールインベストメント株式会社、アドバンテッジパートナーズが国内外の機関 投資家とともに組成するファンドが匿名組合員として出資する匿名組合の営業者で ある有限会社 DRF、並びに機構を引受先とする第三者割当増資を実施しました。
・その後、機構は、スポンサーグループとともに対象事業者の事業再生をサポート してきましたが、その再生に一定の目処が立ったことから、対象事業者に対して保 有する株式について、スポンサーである丸紅へ譲渡するためのプロセスを進め、今 般、譲渡の決定に至ったものです。本決定を受けて、機構は、ただちに丸紅との間 で譲渡に関する契約を締結し、速やかに譲渡を実行する予定です。
ダイエーグループ:
・ダイエーグループは、㈱ダイエー(以下「ダイエー」という)及び連結 子会社 101 社、関連会社 14 社の合計 116 社で構成されている。今回再生支 援の申込を行った対象事業者は、㈱ダイエー、㈱十字屋、㈱キャナルシテ ィ・オーパ、㈱中合、㈱サカエ、九州スーパーマーケットダイエー㈱、㈱ 日本流通リース、㈱浦安中央開発、㈱オレンジエステート、㈱セリティフ ーズ、㈱デイリートップ、㈱西神オリエンタル開発の計 12 社である。
PI研のコメント:
・産業再生機構、41件の支援の中でも最大級の案件ともいえるダイエーの事例です。小売業の経営の本質をついている案件であり、土地と金融との関係のバランスが崩れた時、経営環境がどう激変するかを如実に表す事例といえます。残念ながら、小売業、特に、食品スーパーの成長戦略は土地=成長戦略といえ、その取得のために金融に依存せざるをえない面があり、土地と金融は運命共同体といえます。通常の経営環境ではこのバラスが崩れることはないのですが、バブル、デフレなどにより土地の価値、金利等の激変が起こった時に、バランスが崩れ、キャッシュフロー、すなわち、マーチャンダイジング戦略ではどうにもならなくなるといえます。ダイエーの場合も、「対象事業者の債権の元本総額 1,020,562 百万円」と、1兆円を超え、返済不能となり、結果、金融機関が「関係金融機関等において金融支援(上記②) 等が行われる債権の元本額 626,225 百万円」と、多額の債権放棄を行わざるを得ず、丸紅株式会社及び株式会社アドバン テッジパートナーズへ、産業再生機構を仲介に、譲渡され、最終的には丸紅、イオンへと所有権が移ってゆくことになるわけです。このケースも「対象事業者及び主力三行は、過剰債務を解消」となり、当事者と金融機関がその責任を負ったといえます。いまは、経済環境が比較的安定していますが、今後、急変があれば、この時のように、政府が主導し、産業再生機構が復活することもあるといえます。いずれにせよ、食品スーパーの経営は土地と金融の動向をしっかり見つめ、成長戦略をつくる必要があり、現金商売とはいえ、B/Sの動向、資産と負債のバランスが最後は生き残れるかどうかの決め手になるといえます。その意味で、産業再生機構の41件の案件は今後の経営戦略を構築する上で、じっくり研究する必要があるといえます。
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