今はなき産業再生機構の事業再生事例、フレック!
産業再生機構:平成16年4月27日:
・株式会社フレックに対する支援決定について
・支援決定についての機構の考え方 対象事業者は千葉県及び埼玉県など首都圏に店舗展開する生鮮食品に強み をもつ食品スーパーマーケットです。優良立地に店舗網を保有し、船橋市場を 中心とした優位な仕入れの仕組みに基づく低価格での商品供給力に強みを持 っており、千葉県を含む首都圏の食品売上市場の成長を背景としたコア事業の 競争力は十分にあると判断できます。しかし、(1)対象事業者は過去の過大な 不動産投資、積極的な店舗展開により過剰債務を抱えるに至っていること、(2) 一部の店舗の不採算性等によって利益率が低いこと、を主因として自力再建は 困難と判断されます。 そこで、本事業再生計画の実行を通じた、(1)金融支援による過剰債務の 解消と、(2)スポンサーとなるシートゥーネットワーク株式会社への事業統合 による強固な財務・営業基盤の確保を実現することによって、消費者のニーズ に対して小回りの利く食品スーパーマーケットとして速やかな事業再生を果 すことができるものと考えています。
・支援申込みに至った経緯:
・対象事業者は過去の過大な不動産投資、積極的な店舗出店により過剰債務 を抱えるに至り、平成 13 年に「3 ヵ年中期経営計画」を策定し、低採算店の 閉鎖、不要資産売却等による債務圧縮に努めてきた。しかし業績自体の不調に より財務体質の改善には至らず、現状の過剰債務を抱えたままでの自力再建は 困難と判断。下記に示すような問題点を抱えた事業面、財務面、組織面を含め た抜本的な改革が必須であるとの認識に至り、千葉銀行とともに産業再生機構 に支援を申し込むこととした。
・事業面:
・バブル期の不動産投資により借入れ過大の傾向にあったが、これが解 消されないまま店舗展開を進め、また株式公開に向けた大阪出店計画(頓 挫)など拡大路線をとりつづけた。
・財務面:
・競争激化や消費低迷により事業環境が過酷化するなか、自らの強みか ら外れた戦略を選択して業績低迷を招き、ひいては店舗展開の失敗によ り大きな損失を被った。
・組織面:
・経営管理体制が不備であり、業績に対する責任が不明確であった。
・スポンサーとの事業シナジー:
・各事業の収益性や市場性、競合優位性、スポンサーとなるシートゥー ネットワーク株式会社との事業シナジーを総合的に勘案し、対象事業者 の中核事業を千葉県及び埼玉県等の食品スーパーマーケット事業と位置 付ける。
・買取決定に係る金額等:
・対象事業者の債権の元本総額 9,968 百万円(A)
・買取り(上記①)に係る債権の元本額 2,267 百万円(B)
・関係金融機関等において金融支援(上記②) 等が行われる債権の元本額 7,701 百万円(A-B)
・債権額等:
・機構は、対象事業者に対する元本 2,182 百万円(*)の債権を、金融機関等か ら 926 百万円で買い取り、事業再生計画に沿って債権放棄(1,238 百万円)を 行った後、残った債権 944 百万円全額の弁済受領を今回完了したものです。
産業再生機構:
・株式会社産業再生機構は、株式会社産業再生機構法に基づき、平成15年5月より業務を開始し、平成19年3月に解散、同年6月に清算を結了しました。
・産業と金融の一体再生を掲げ、約4年間の活動期間中に41件の支援を決定し、当該事業者の事業再生を進めました。
PI研のコメント:
・いまから約10年前のことですが、今はなき産業再生機構時代の食品スーパーの事業再生の事例、フレックを振り返ってみました。全盛時には全国から繁盛店として視察があいつぎ、成功事例として、セミナー等が盛んに行われていました。小判鮫商法の典型、特に、イトーヨーカ堂と真っ向から戦い、打ち勝ったというのが売りでした。当時は財務状況は分からなかったのですが、この産業再生機構の支援の経緯を見ると、約100億円の負債があり、「これが解 消されないまま店舗展開を進め」、「自らの強みか ら外れた戦略を選択して業績低迷を招き、ひいては店舗展開の失敗によ り大きな損失」とありますので、財務面では限界を超えた苦境の中にあったといえます。結果、約80%の債務を金融機関が放棄し、シートゥー ネットワークへ売却、その後、シートゥー ネットワークはテスコに買収され、さらに、イオンの傘下となりますので、結果的にイオンに移ったといえます。食品スーパーは生鮮食品を中核とする典型的な現金商売、キャッシュフローの極地をゆくビジネスですが、一方で、土地と金融と切り離せない商売でもあり、フローとストックの2面性をバランスよく管理してゆくノウハウが経営課題といえます。健全な成長戦略を維持している限りは、経営バランスが崩れることはありませんが、一旦、土地と金融にバブル、デフレなどの異常事態が生じるとフローではカバー不能となり、それをフローでカバーしようとして、深みにはまり、経営破たんすることになるといえます。この事例はまさにその典型ともいえ、ここが食品スーパーの経営面での弱点ともいえます。現在は比較的土地、金融が安定していますが、また、このような異常事態が起こらないとはいえません。その意味で、すでに解散した産業再生機構ですが、このフレックを含め、全41件の支援事例は今後の経営戦略を考える上において貴重な経営の財産、反面教師ともいえます。ちなみに、「産業再生機構関連の公表項目等についての著作権を保有・行使する主体は存在しません。」とのことです。
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