神戸物産が9/11、2024年10月期の第3四半期決算を公表しました。結果は増収増益の好決算となりました。今回は、この決算短信をもとに、神戸物産について、決算内容、今後の動向を解説します。神戸物産は業務スーパーを経営の柱に据え、全国に1,071店舗(2024年7月現在)をフランチャイズをメインに展開している企業です。コンビニとほぼ同様のビジネスモデルといえます。
特に、メガフランチャイジイジーといわれる強力な支援企業もあり、急激に店舗を増やしてきた企業です。ここでは、その主要2社、G-7ホールディイングス、オーシャンシステム(いずれも上場)の直近の決算短信、その動向も取り上げ、神戸物産の今後を占います。
神戸物産は10月が決算月ですので、直近の決算短信は2024年10月度の第3四半期決算となります。その結果ですが、売上高が11.4%増、営業利益が14.4%増と大幅な増収増益の好決算となっています。ただし、当期純利益は-4.8%減と減益でした。これは、日経新聞によれば、「外国為替市場で7月以降に急速な円高・ドル安が進み、為替予約に関連するデリバティブ評価損を計上したことが響いた」とのことです。
神戸物産は業務スーパーが主体ですので、輸入関連商品が多く、特に、原価に外国為替の影響が強く出る傾向があります。円高、円安、いずれに為替が動くか、その動向が読みにくく、結果、デリバティブでヘッジをかける必要が生じ、この第3四半期決算では「円高・ドル安」となり、評価損が発生したとのことです。その金額は約50億円とのことですので、これが当期純利益を直撃したといえます。
結果、EPS、1株当たりの当期純利益にも影響があり、EPSは、67.24円、昨年が71.04円でしたので、約5%減少となりました。
一方、BS、貸借対照表ですが、自己資本比率は54.7%、昨対では微増、BPS、1株当たりの当期純資産ですが、554.98円とこちらも昨対では増加しています。P/L、損益計算書では、当期純利益がEPSを下げる結果となりましたが、BS、貸借対照表では、BPSはプラスと興味深い結果です。
それにしても、デリバティブはこれだけ、為替相場が変動する中では先が読みにくいといえ、特に、輸入、輸出の比率の大きい企業は経営の先が読みにくいといえます。
今回、神戸物産はこのデリバティブの評価損がなければ、大幅な増収増益の好決算でした。本業の業務スーパーは好調ですので、短期的には厳しいですが、中長期的には好決算が期待できそうです。
神戸物産の配当の方ですが、第2四半期末、期末、合計が公開されています。その合計を見ると、22円/1株です。今期予想は23円/1株ですので、1円ですが、今期は増配の予想です。ちなみに、1000株保有していると、22,000円となります。
さて、ここまでの結果を踏まえ、通期予想ですが、売上高は4,980円、5,000億円が目前となっています。営業利益は310億円です。これをこの第3四半期の決算結果と比較すると、それぞれ、75.8%、86.0%となります。この時点では3/4四半期ですので、75%は超えて欲しいところです。どちらも、75%ラインを越えていますが、営業利益の方が86.0%ですので、恐らく、今期は、この通期予想を大きく超えてくるものと思われます。あとは当期純利益がどこまで、デリバティブの評価損、約50億円をどこまで改善できるか、ここがポイントです。
一方、EPSの方ですが、97.44円となっています。先ほどの第3四半期決算時が67.24円ですので、単純に4/3倍して見ると、89.7円となります。これは、通期予想の92.0%に当たりますので、ほぼ、この通り進むか、若干、とどかない可能性もあります。やはり、デリバティブの評価損が響いているといえます。
株式の方ですが、期中、自己株式、期末が公開されており、期末を見ると、2億7,360万株とかなり大量の株式を発行しています。ちなみに、昨年も同様な株式数ですので、この1年、増配、減配等はありませんでした。
ここまでの決算の結果をもとに、株価がどう動いたかを見てみます。赤が終値、オレンジが売買高です。決算発表日が9/11ですので、翌営業日、9/12がポイントです。その動向を見ると、売買高、オレンジは跳ね上がっていますが、株価、赤、終値は下がっています。ただ、翌日は戻していますので、投資家は今後の動向を冷静に見守っているといえそうです。
株価の方ですが、9/12時点では、4,287円、PERは44.03倍、PBRは7.72倍となっており、どちらも、食品スーパーマーケット業界と比べ、異常値、高い数値です。従って、割高感のある株価水準といえます。ちなみに、時価総額は1兆1,500億円ですので、流通業界の中でも屈指の高い数字です。神戸物産が投資家から高い評価を受けていることがわかります。
神戸物産の店舗数は、1,071店(2024年7月現在)と全国に1,000店舗以上を展開しています。これに伴い、売上高も、ここ数年、110%以上の伸びと高い成長率を維持しています。営業利益も8%前後を維持し、約300億円に迫る勢いです。上場している小売業(卸?)の中では屈指の成長率で、時価総額が1兆円を越えるのもうなづけます。
神戸物産の損益モデルですが、1店舗当たり月額4,350万円、年商では約5億円となります。売上総利益、いわゆる、粗利は17%、販管費は14.9%、結果、営業利益は2.1%となります。ちなみに、販管費の内分け、家賃が3%、人件費が5.5%とのことです。神戸物産は居抜き出店が多く、結果、家賃が経費の中でも大きくなる傾向があります。
神戸物産の出店地域ですが、関東、関西、地方、ほぼ3分割と、バランスよく全国への出店がなされています。これは神戸物産の新規出店を支えるメガフランチャイジイジーの支援が大きいといえます。ちなみに、九州、北海道は神戸物産の新規出店がまだ少なく、今後の成長の余地がまだあるといえます。
今年に入り、神戸物産の集客力回復傾向とのことで、出荷実績が向上してきています。この7月で見ると、直轄エリアでは、既存店は105.0%、全店は109.7%、全国では110.2%と好調です。
神戸物産の強みですが、何といってもPB、オリジナル商品の多さです。全国26工場で自社生産しており、SPA、製造小売業といっても過言ではありません。ユニクロの業務スーパー版といえます。PB比率も約35%ですので、食品スーパーマーケットが約10%ですので、いかに、PB比率が高いかがわかります。この内、輸入のPBが約25%ですので、ここからも、デリバティブが必須であることがわかります。
最後に、今後の長期ビジョンですが、店舗数は現状の約1,000店舗を1,500店舗へと伸ばしてい行くとのことです。PB比率も現状の約35%を40%へと引き上げるとのことです。結果、営業利益率も現状の約8%を10%以上にアップすることです。
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