July 11, 2011

大黒天物産、2011年5月期決算、増収増益!

   大黒天物産が7/7、2011年5月度の決算を公開した。結果は、売上高893.64億円(11.4%)、営業利益46.12億円(10.6%)、経常利益45.93億円(10.3%)、当期純利益22.40億円(0.9%)と、増収増益の好決算となった。特に、5月度決算企業は3/11の東日本大震災の影響、昨年3月度以降の決算企業に適用された資産除去債務に関する会計基準の適用等があり、当期純利益へ大きな影響が生じるが、大黒天物産は当期純利益もわずかではあるが増益となり、好決算となった。ちなみに、大黒天物産の資産除去債務に関する会計基準の適用額は2.59億円(売上高対比0.28%)であった。

   そこで、大黒天物産が増収増益と好決算となった要因をまずは売上面から見てみたい。大黒天物産の経営の特徴は積極的な新店開発にあるといえる。今期も、「岡山県に3店舗(うち1店舗は移転出店)、広島県に1店舗、鳥取県に1店舗、兵庫県に1店舗、福岡県に1店舗、さらに、新たな出店地域といたしまして山口県に2店舗、奈良県に1店舗の計10店舗を出店いたしました。」とのことで、地元岡山県を中心に西は九州、東は奈良県と広域での積極的な出店を繰り広げ、結果、現在67店舗となった。

   各食品スーパーマーケットの2011年度決算を見ると、今期は新規出店が抑制気味であるが、大黒天物産は敢えて、積極的な新規出店を広域で行い、成長性重視の経営戦略である。これだけ、新規出店が可能な要因は大黒天物産特有の財務構造にあるといえる。大黒天物産の出店にかかわる資産、すなわち、土地、建物、敷金・保証金等の合計であるが、今期は114.07億円であり、総資産279.78億円の40.77%であり、1店舗当たりではわずか1.70億円である。これは、2011年度の決算公開企業約50社の平均が約6億円であるので、いかに少ないかがわかる。特に土地が少ないのが特徴といえる。

   しかも、今期の大黒天物産の純資産比率は53.37%(昨年52.62%)であるので、ここから、出店にかかわる資産40.77%を引いた出店余力は12.60%である。これも2011年度の決算公開企業約50社の平均が-20%前後であるので、極めて高い出店余力であるといえる。したがって、大黒天物産は極めて少ない投資で新規出店が可能なだけでなく、財務的にも自己資本で十分に新規出店ができる余力があるといえ、これが大黒天物産の積極的な新規出店をささえる原動力になっているといえる。ちなみに、今期の投資活動によるキッシュフローの新規出店にかかわる投資であるが、27.48億円(昨年13.61億円)であり、これを1店舗当たりの出店にかかわる資産1.70億円で割ると16.16店舗となる。したがって、全店舗数67店舗で割ると、24.11%となり、出店意欲も旺盛であり、今後も積極的な新規出店を行ってゆく意思が強く表れているといえる。

   一方、もうひとつの大黒天物産の強さ、収益力であるが、その要因を原価、経費面から見てみたい。まずは、原価であるが、77.46%(昨年77.64%)と、0.18ポイント下がった。これについて、大黒天物産は、「当社グループでは平成20年4月より実施しております購買頻度の高い商品約100品目以上を2割から5割値下げした「生活応援宣言セール」を引き続き実施するとともに、・・」等、背極的な価格訴求をかけており、しかも、その主力は原価の低いPBが主体であるため、価格訴求と原価の改善を同時に追求したマーチャンダイジング政策に取り組んでいるとことが大きいといえよう。結果、売上総利益は22.54%(昨年22.36%)となった。一方、経費の方であるが、17.37%(昨年17.15%)となり、0.22ポイント上昇した。ただ、上昇したとはいえ、17.37%は、2011年度の決算公開企業約50社の中ではベスト3に入る低さであり、これが、大黒天物産のもうひとつの強さの源泉といえる。

   結果、差し引き、商品売買から得られる利益、マーチャンダイジング力は5.17%(昨年5.21%)となった。大黒天物産はその他営業収入が計上されていないため、マーチャンダイジング力=営業利益となる。したがって、今期の営業利益は、残念ながら、率で見ると、経費の上昇を原価の改善でカバーできず、若干下がったが、高で見ると、売上高が積極的な新規出店により、11.4%増となったため、それに伴い、10.6%の増益となった。このマーチャンダイジング力を見る限り、経費が極限に近い低さであるため、まだまだ価格訴求が可能な状況にあるといえ、大黒天物産の競争力には余力があるといえよう。

   このように、大黒天物産の2011年5月度の決算が公表されたが、その結果は、増収増益の好決算となった。特に、デフレ環境の中、各社、新規出店が抑制気味であるにも関わらず、大黒天物産は今期10店舗と積極的な新規出店を行っており、しかも、新店への投資も旺盛であり、成長戦略を重視した強気の経営を推し進めたといえる。大黒天物産は出店にかかわる資産も極めて少なく、また、出店余力も十分であり、負債に頼らない新規出店が可能な財務状況にある。さらに、経費比率は極めて低く、価格競争力は強いといえ、今後もこの価格を武器に、積極的な新規出店がなされてゆくものといえよう。したがって、2012年度も大黒天物産の積極的な新規出店が続くといえ、年商1,000億円がいよいよ視野に入ったといえよう。

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July 10, 2011

イオン、2012年2月期、第1四半期、減収営業増益!

   イオンが7/6、2012年2月期の第1四半期決算を公表した。結果は営業収益1兆1,999.61億円(-1.2%)、営業利益283.01億円(29.9%)、経常利益308.77億円(24.9%)、当期純利益57.62億円(-70.1%)となり、減収、営業、経常段階では大幅な増益となったが、当期純利益は、「特別損失として、震災関連損失306 億17 百万円、資産除去債務会計基準の適用に伴う影響額177 億73 百万円を計上し、・・」とのことで、大幅な減益となった。イオンは被災地、東北にも数多くの店舗を展開しているため、震災関連損失が300億円を超え、その影響が響いたといえる。

   それにしても、これだけ特別損失が発生すると、キャッシュフローも厳しい状況となる。今期のイオンの営業活動によるキャッシュフローは、-1,019.59億円(昨年-1,105.20億円)と、昨年も1,000億円を超えるマイナスであったが、今期も同様に1,000億円を超えるマイナスとなった。この時点で、今後の投資、財務改善へのキャッシュの調達が厳しい状況となり、選択肢としては、借入を増やすか、資本金を増強するか、内部留保を取り崩す決断が必要となる。

   ちなみに、営業活動によるキャッシュフローが-1,000億円を超えた要因は法人税等の支払額-424.09億円(昨年-317.83億円)、仕入債務の増減額(-は減少)-388.54億円(昨年-598.04億円)、売上債権の増減額(-は増加)-384.08億円(-586.48億円) に加え、今期は税金等調整前四半期純利益が-148.14億円(昨年425.19億円)となったことが大きい。一方、プラス項目であるが、減価償却費334.20億円(昨年342.43億円)、災害損失引当金の増減額 (-は減少)174.25億円(昨年は0)、資産除去債務会計基準の適用に伴う影響額177.73億円(昨年は0)等である。

   そこで、そのキャッシュの調達であるが、財務活動によるキャッシュフローは231.60億円(昨年23.04億円)と、プラスになっているが、営業活動によるキャッシュフローを賄うまでにはなっておらず、したがって、内部留保を取り崩してキャッシュを埋めたといえる。実際、キャッシュフロー上の現預金は期首には3,068.20億円あったが、期末には1,802.80億円と大きく減少しており、B/S上の現金も 前期決算時には3,202.12億円であったが、この第1四半期では1,971.43億円と1,000億円以上減少している。これまで公開された2012年度の食品スーパーマーケットの第1四半期決算を見ると、現金はむしろ増加している場合が多いが、イオンは対象的なキャッシュの流れであり、それだけ、東日本大震災の影響が大きかったといえよう。

   ちなみに、財務活動によるキャッシュフローが231.60億円とプラスになった要因であるが、長短借入金が241.50億円増加していることに加え、社債が197.67億円となり、有利子負債が増加しており、これも営業活動によるキャッシュフローのマイナスを補ったといえる。結果、B/Sの負債の有利子負債は1兆2,041.98億円(前期決算時1兆1,526.23億円)と増加している。したがって、自己資本比率も22.9%(前期決算時23.5%)と、財務状況は極めて厳しい状況にあり、約80%弱を負債に負う財務構造である。

   さて、このような状況の中での投資活動によるキャッシュフローであるが、-489.37億円(昨年-87.47億円)と、大きく増加しており、多額の投資を実施している。その中身であるが、新規出店関連への投資、有形固定資産の取得による支出-506.79億円(昨年-537.70億円)、差入保証金の差入による支出-23.17億円(-26.58 億円)と、ほぼ、昨年同様の投資である。したがって、極めて厳しいキャッシュフローの中でも、成長戦略への投資については昨年同様キャッシュを厚く配分しているといえる。ちなみに、昨年の投資活動によるキャッシュフローが、今年と比べ少なかったのは貸付金の回収による収入1.55億円(昨年446.53億円)と、この違いによる。したがって、これらの投資活動によるキャッシュフローは内部留保及び新たな有利子負債の調達で賄ったといえ、この第1四半期はかなり苦しいキャッシュフローであったといえよう。

   さて、これに対して、キャッシュを生み出す大本、原価、経費の状況であるが、原価は73.43%(昨年73.14%)となり、上昇、結果、売上総利益は26.57%(昨年26.86%)となった。一方、経費の方は36.09%(昨年36.38%)と減少した。したがって、差し引き、商品売買から得られる利益、マーチャンダイジング力は-9.52%(昨年-9.52%)と、奇しくも同じ数字となった。そして、これに、GMSのキャッシュの源泉ともいうべき不動産収入、物流収入等のその他営業収入が12.17%(昨年11.52%)加わり、結果、営業利益は2.65%(昨年-2.00%)と、大幅な増益となった。こう見ると、増益の要因は、マーチャンダイジング力ではなく、その他営業収入の増加によるところが大きいといえ、東日本大震災の影響は結果として、その他営業収益を押し上げ、増益をもたらしたといえよう。

   このように、イオンの2012年2月期、第1四半期決算は減収営業増益となったが、営業増益の要因はその他営業収入によるところが大きく、原価、経費は原価の上昇が経費の削減で相殺されており、マーチャンダイジング力はプラスマイナス0、キャッシュを生みだせなかったといえる。また、キャッシュフローはかなり厳しい状況にあり、フリーキャッシュフローが大きくマイナスとなったため、有利子負債の調達と内部留保を大きく崩さざるをえなかったといえる。こう見ると、イオンにとっては、東日本大震災の影響は財務に大きな影響を与えたといえ、次の、中間、そして、通期へ向けて、厳しい経営環境が続くといえ、今後、この結果を踏まえ、どのような抜本的な経営戦略を打ち出すか注目である。

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July 09, 2011

マックスバリュ東北、2012年2月、第1四半期、震災影響!

   マックスバリュ東北が6/27、2012年2月期、第1四半期決算を公表した。マックスバリュ東北は3/11の東日本大震災の被災地でも店舗展開しており、その結果が注目されていた。実際、「当社は今回の震災により店舗の建物と施設の一部損壊及び商品破損等の被害を受けましたが、現在では全て復旧し全店通常営業を行っております。」とのことで、店舗、商品等に損害が発生している。また、「震災直後には食糧品や飲料、毛布などの支援物資の提供による被災地支援を行うとともに、店頭募金や福島県産野菜の販売を中心とした「がんばろう福島フェア」、「がんばろう日本!黄色いレシートキャンペーン」などお客さまとともに行う支援活動を実施し、東北エリアの皆さまの暮らしを支えるという社会的使命を果たすべく活動を続けております。」とのことで、震災後も懸命に被災地の復旧に取り組んだとのことである。

   その結果であるが、営業収益216.12億円(-0.1%)、営業利益2.53億円(前期は赤字)、経常利益1.87億円(前期は赤字)、当期純利益-7.55億円(前期は赤字)となり、前期も厳しい状況であったが、今期も営業、経常段階では赤字から脱却したとはいえ、依然として厳しい経営状況が続いている。特に、当期純利益に関しては、今期から資産除去債務に関する会計基準の適用が5.13億円(売上対比2.43%)計上された上に、災害による損失3.86億円等を計上したことにより、大幅な赤字決算となった。原価、経費への影響以上に直接的な店舗等への災害損失が発生しており、厳しい決算となった。

    このように、マックスバリュ東北にとっては、東日本大震災の影響は甚大なものがあったといえ、経営基盤の強化が必須となり、震災後の4/5に、「第三者割当によるA種種類株式の発行に関するお知らせ」を公表し、5/19を払込期日として、親会社イオンからの資金調達を実施した。その理由について、マックスバリュ東北は、「厳しい経営環境の中で、当社の営業基盤エリアにおける競争激化に伴う収益力の低下を主たる要因として、業績不振店舗の固定資産等についての減損損失などにより、2005 年度から2010年度までの累計で4,498 百万円の当期純損失を計上したことで、自己資本比率が低下している状況にあります。」とのことで、ここ数年、厳しい経営環境にあったとのことである。

   そして、「また、直近の予期せぬ東日本大震災の発生による影響で消費環境の先行きの不透明感が一層高まっております。今後当社は、安定した財務基盤を確立・強化するとともに、ますます競争が激化する北東北エリアにおいて競争に打ち勝ち、2013 年度には北東北売上高No.1の座を奪還し、再度成長軌道へ回帰するために、抜本的な経営方針の変更が不可欠と判断し、・・」とのことで、財務基盤の強化を前提とした構造改革に着手したとのことである。

   結果、自己資本比率は、純資産が19.68億円から57.34億円へと増加したため21.0%(昨年7.2%)と大きく改善した。実際、今期の財務活動によるキャッシュフローを見てみると、株式の発行による収入が44.52億円あり、このキャッシュを短期借入金の返済へ31.90億円、長期借入金の返済へ4.56億円、合計36.46億円と大半を回している。ただ、それでも、約80%は負債に依存する財務状況であるといえ、今後、さらに、増資するか、キャッシュを生み出す質の改善、及び量の拡大をはかって行く必要があろう。

   そこで、今期のマックスバリュ東北のキャッシュを生み出す質を原価、経費面から見てみると、原価は76.48億円(昨年77.15%)と0.67ポイント改善している。結果、売上総利益は23.52%(昨年22.85%)となり、粗利が向上した。一方、経費の方であるが、24.91%(昨年25.64%)と、0.73ポイント下がっている。したがって、原価、経費双方が下がっており、結果、商品売買から得られる利益、マーチャンダイジング力は-1.39%(昨年-2.79%)と、依然として、マイナスではあるが、その幅は大きく縮まっており、東日本大震災の影響が結果として、マーチャンダイジング力のプラスに寄与したといえよう。そして、これに、不動産収入、物流収入等が2.60%(昨年2.64%)加わり、営業利益は1.21%(昨年-0.15%)と、昨年の赤字から、黒字転換となった。したがって、キャッシュを生み出す質は、今回の東日本大震災の影響もプラスに寄与したといえ、大きく上昇しているといえる。

   このように、マックスバリュ東北の2012年2月期、第1四半期決算は、東日本大震災の影響を強く受け、当期純利益が大幅なマイナスとなった。また、ここ数年厳しい経営状況が続いていた中での予期せぬ大震災であり、経営基盤の強化が必須となり、親会社のイオンから出資を受けざるをえなくなり、資本増強に着手した。ただ、それでも、依然として約80%を負債に依存する状況であり、今後、さらに、資本の増強を行うか、抜本的な経営の構造改革により、キャッシュを生み出す質、すなわち、マーチャンダイジング力の改善をはかる一方、キャッシュを生み出す量、新規出店も課題といえる。マックスバリュ東北が今後どのような経営戦略を打ち出すか、注目である。

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July 08, 2011

ハローズ、2012年2月、第1四半期、増収営業増益!

   ハローズが6/29、2012年2月期の第1四半期決算を公表した。結果は、売上高185.90億円(7.8%)、営業利益5.52億円(8.3%)、経常利益5.25億円(9.9%)、当期純利益2.04億円(-22.9%)となり、営業段階では増収増益、当期純利益は今期から資産除去債務に関する会計基準が1.41億円(売上対比0.75%)適用されたため、減益となった。この第1四半期は、東日本大震災の影響が売上高、営業利益にどの程度あるのか、また、今期から適用された資産除去債務に関する会計基準の適用が当期純利益にどのような影響を与えるかが注目の決算であったが、後者は1.41億円、結果、当期純利益は減益となった。

   そこで、前者、東日本大震災の影響であるが、原価、経費面から見てみたい。まずは、ハローズのコメントであるが、「当第1四半期会計期間におけるわが国経済は、東日本大震災による甚大な被害とその後の原子力発電所事故の影響が続き、被災地の生産や物流機能の低下のみならず、その影響の範囲や程度が不透明で、先行きが懸念される厳しい状況となりました。」とのことで、不透明さを強調している。

   では、実際の影響であるが、原価は76.08%(昨年77.24%)となり、-1.16ポイントと大幅に下がった。結果、売上総利益は23.92%(昨年22.76%)となり、粗利が上昇している。これについて、ハローズは、「商品面におきましては、「生活防衛企画」である「低価格最善選」を継続して実施し、季節や生活催事に合わせての商品の入れ替えにより、常にお客様に最適な内容になるように努めました。」とのことで、低価格戦略を継続したとのことである。ただ、一方で、「当社プライベート・ブランド商品の「ハローズセレクション」の開発にも注力し、売上高構成比は前事業年度末の8.0%から8.4%に増加いたしました。」とのことで、原価の低いPBを積極的に販売している。さらに、「当事業年度から全面稼働いたしました「早島物流センター」の効果的運用により、商品調達コストの低減に取り組みました。」と、「早島物流センター」の稼働も大きかったといえよう。当然、これらの施策に、東日本大震災により、特売が思うように打てないという売価面での下げ止まりが加わり、予想以上の原価の削減につながったのではないかと思われる。

   一方、経費の方であるが、23.78%(昨年22.79%)と、0.99ポイント上昇しており、原価とは対照的な動きとなった。ハローズ自身は、「経費面では、オペレーション面及び管理面の両面から効果的なコストの管理を目指し、生産性向上やコスト削減などに各種の委員会を設けて取り組みました。」とのことで、幅広く、経費削減に取り組んだとのことであるが、結果は厳しい数字となった。ただ、この23.78%は前期決算の決算公開企業約50社の中では10番前後に入る低さであり、上昇したとはいえ、かなり低い数字である。

   結果、差し引き、商品売買から得られる利益、マーチャンダイジング力は、0.14%(昨年-0.03%)となり、プラス転じた。原価の削減がいかに大きかったかがわかる。ここ最近公開された2012年度2月期の食品スーパーマーケットの第1四半期決算の状況を見ると、原価が大きく下がるケースが多く、ここからも、東日本大震災の影響は、結果として、食品スーパーマーケットの原価改善に寄与しているといえそうである。そして、これに、不動産収入、物流収入等のその他営業収入が2.83%(昨年2.99%)加わり、営業利益は2.97%(昨年2.96%)と、わずかではあるが、増益となった。この第1四半期は売上高が7.8%増と好調であったことも、営業利益を押し上げた要因といえよう。

   これに対して、財務面であるが、自己資本比率が31.3%(昨年31.0%)と、依然として約70%を負債に依存する状況であり、厳しい結果である。ハローズとしては、今期の好調な営業状況をどう財務改善に結びつけ、食品スーパーマーケットの本質であるキャッシュを生み出す量の拡大、すなわち、新規出店に結び付けたいところであるといえよう。その新規出店に関しては、「店舗開発面では、当第1四半期会計期間中の新規出店はなく、店舗数は広島県19店舗、岡山県22店舗、香川県7店舗の合計48店舗で、前事業年度末から変動はありません。」とのことで、新規出店はなかった。実際、投資活動によるキャッシュフローを見ると、新規出店関連への投資は7.38億円(昨年12.72億円)と大きく削減している。一方、財務活動によるキャッシュフローにおける有利子負債については-8.88億円(昨年7.86億円)と、昨年と一転、削減しており、この第1四半期決算時では投資を絞り、財務改善にキャッシュを配分したといえる。

   このように、ハローズの2012年2月期の第1四半期決算は、当期純利益は資産除去債務に関する会計基準の適用により、減益となったが、営業、経常段階では増収増益の好決算となった。特に、東日本大震災の影響が原価の改善につながったようであり、大幅に粗利が改善し、営業利益を押し上げたといえる。一方で、新規出店は控え、キャッシュを財務改善に充てており、内部体制の充実を図ったといえよう。先行き不透明であるがゆえの経営判断といえよう。ハローズがこの結果を踏まえ、次の中間、そして、通期、内部体制の充実を一層強めるのか、それとも一転、積極策に転じ、新規出店の開発に入るのか、今後の経営決断に注目である。

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July 07, 2011

Chain Store Age2011/7/1、震災後の消費動向を投稿!

   Chain Store Age、2011年7月1日号に緊急レポート、「POSデータに見る、東日本大震災後の3月、4月度の消費動向」を投稿した。このレポートは、TOPNAVI-NETのPOSデータをもとに、全国の食品スーパーマーケットの震災後の販売動向を明かにし、今後の食品スーパーマーケットの有事の際に役立てていただくことを意図したものである。特に、全国を9つの地区、北海道、東北、京浜、関東、北陸、東海、近畿、中四国、九州に分けて、分析しているので、被災地東北の消費動向が震災後どのように変化したかが鮮明であり、さらに、東北と比べ、全国ではどのような消費動向であったかがわかる内容である。

   今回分析したPOSデータは膨大な量であり、食品約250カテゴリー、雑貨約100カテゴリー、日用品約150カテゴリー、合計約500カテゴリーを分析対象にした。単品数では、約20万件となり、これを今年の3月度、昨年の3月度、さらに、今年の4月度、昨年の4月度とを比較し、その伸び率から、特に被災地東北において、昨年と決定的に消費構造に変化があったカテゴリーをピックアップした。

   今回のレポートでは、明らかに消費構造に変化をもたらしたものとして、東日本大震災のあった3月度の被災地東北にて、昨対200%を超えるカテゴリーをすべてピックアップし、そこから、東日本大震災が消費行動にどのような変化を与えたかを明らかにした。また、同時に、次の4月度はどのような数字となったか、さらに、東北以外の地区ではどのような消費行動であったかを一目で見られるように一覧表にまとめた。

   結果、図表は3つになった。ひとつめの図表1は食品の3月度東北で200%以上となった全カテゴリー、図表2は雑貨の3月度東北で200%以上となった全カテゴリー、そして、図表3は日用品の3月度東北で200%以上となった全カテゴリーである。120%、130%では誤差がでる可能性があるが、200%以上は明らかに、東日本大震災の影響といえると思われ、実際、POS分析の結果を見ると、食品スーパーマーケットが、今回のような未曽有の有事の際、絶対に抑えておかなければならないカテゴリーが上位に来ているといえる。また、今回は実際のPOSデータであるので、どのくらいの在庫を確保すべきかも明らかになった。食品スーパーマーケットとしては、この結果をもとに、消費者のライフラインを守るために、どのくらい在庫を確保すべきかが推し量れるといえる。

   さて、その結果であるが、レポートの中でも詳しく解説したが、全カテゴリーの中で、圧倒的なNo.1カテゴリーは水であった。東北では3月度518.8%という異常値を記録した。これは3月度の丸1ケ月間の数字であるので、3/11の東日本大震災直後、1週間から2週間はさらに莫大な需要であったと推測される。全国平均も272.2%であるので、日本全国で水の需要が異常な状況であったことがわかる。東北以外では、同じく被災地となった関東も高く、512.0%であった。そして、4月度となっても、水の需要は衰えず、東北で550.1%、全国でも240.9%、関東では552.5%となった。

   いかに、水が有事の際、重要なカテゴリーであるかがわかる。しかも、平均約500%であるので、通常月の5倍の在庫が発生するといえ、それが、2ケ月続くといえるので、食品スーパーマーケットとしては、いかに、日頃から水の確保、少なくとも月間在庫の5倍、2ケ月間を考慮すれば、10倍の確保が消費者のライフラインを守るためには必要といえよう。また、今回の東日本大震災では商品の供給ルートが各地で寸断されただけでなく、工場にも被害が及んだことから、日頃から、いざという時のために、複数の商品供給ルートを確保しておくことが必要といえよう。特に、水に関しては、このPOSデータが示す通り、最優先で日ごろから、その対策について取り組んでおく必要があるといえる。

   水以外では、POSデータを見ると、300%以上のカテゴリーとして、食品では魚肉ハム347.5%(4月度221.0%)、包装餅317.2%(4月度227.4%)、雑貨ではマスク384.9%(4月度274.0%)、日用品ではフラッシュライト(懐中電灯等)369.9%(4月度1,016.4%)、ガス部品396.2%(4月度379.2%)がピックアップされた。水を含め、一旦、有事の際は、消費者は、このカテゴリーを期待して、店舗に来店するといえるので、こられのカテゴリーは日ごろから、食品スーパーマーケットの売場で有事コーナーとして、マーチャンダイジング戦略に組み込んで置くべきであろう。そして、一旦有事の際は、これらを主体にしたレイアウト構成にし、商品部は全力でこれらの商品を確保すると同時に、いつ有事があっても良いように、在庫を確保しておくべきであろう。

   このように、東日本大震災がもたらした被害は甚大なものであったが、食品スーパーマーケットとしては、再度、大震災のあった3月度、そして、翌月4月度のPOSデータを分析し、有事に際しての対応マニュアル、有事に備えての在庫マニュアルを作っておくべきであろう。今回の、この緊急レポートを、是非、食品スーパーマーケットの有事の際の「備えあれば憂いなし」の経営体制づくりに役立てていただければと思う。

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July 06, 2011

家計調査データ2011年5月度、食品97.9%!

   総務省統計局から7/1、家計調査データ、2011年5月度が公表された。結果は全体の消費額が1日当たり8,908.35円、昨対は98.4%と微減、消費環境の厳しさが反映された結果となった。また、外食を除く食品は、1日当たり2,341.03円、昨対は96.8%、さらに厳しい結果となった。3/11の東日本大震災後の初めての大型連休、ゴールデンウィークの消費動向が含まれるだけに、その結果が気になるところであったが、厳しい結果といえよう。なお、先月、4月度から復活した被災地、仙台は集計世帯数が、前回の4世帯から54世帯へと大きく増加し、通常の集計世帯数にもどりつつあるが、同じく被災地、福島市は依然として0世帯であり、原発事故の影響が家計調査にまで及んでいるといえる。

   ちなみに、仙台市のこの5月度の消費動向であるが、全国平均に対し、全体の消費額は81.5%、食品は97.7%と、双方厳しい状況といえるが、全体の方が、より消費は厳しい状況にあるといえよう。そこで、全体の大分類を見てみると、外食77.6%、住居60.3%、光熱・水道81.8%、家具・家事用品134.8%、被服及び履物58.3%、保健医療63.3%、交通・通信77.0%、教育26.0%、教養娯楽66.1%、その他の消費支出94.0%である。こう見ると、家具・家事用品のみ134.8%と突出しており、異常値である。ホームセンター業界の第1四半期決算が好調であるが、これを裏付ける結果といえよう。また、さらに、その中身を掘り下げてみると、家庭用耐久財211.9%、冷暖房用器具308.5%、一般家具261.3%と、これらが家具・家事用品全体を押し上げているといえる。

   さて、全国の5月度の消費動向であるが、仙台市と反対に食品の方が厳しい結果であった。そこで、全国の食品の消費動向について詳しく見てみたい。まずは、食品の大分類であるが、穀類201.97円(94.9%)、魚介類201.13円(93.5%)、肉類206.35円(101.2%)、乳卵類109.23円(100.3%)、野菜・海藻274.29円(94.4%)、果物83.81円(101.5%)、油脂・調味料107.06円(100.2%)、菓子類211.94円(97.7%)、主食的調理食品112.71円(101.1%)、飲料136.32円(99.8%)、酒類107.94円(97.2%)という結果である。プラスとなった項目は、肉類、乳卵類、果物、油脂・調味料、主食的調理食品(惣菜)であり、これ以外はマイナスであった。特に、穀類、魚介類、野菜・海藻が大きく消費が厳しい項目である。

   そこで、この3つの大分類について、さらに、その要因を掘り下げてみたい。まず、穀類であるが、米62.68円(85.1%)、もち1.42円(81.5%)が80%台と大きく下がり、ついで、食パン24.42円(96.8%)、中華めん12.97円(98.8%)、スパゲッティ 3.58円(99.1%)等が昨対を割った。今後、小麦粉の値上げもあり、穀類は当面、厳しい状況が続きそうである。次に、魚介類であるが、かに1.03円(46.4%)、しじみ1.16円(73.5%)、ほたて貝2.84円(71.5%)、いわし1.35円(84.0%)、たい3.58円(88.1%)、さんま1.10円(89.5%)が大きく下がった項目である。全体的に鮮魚107.19円(92.2%)、貝類が10.06円(85.0%)と落ち込みが大きく、塩干魚介38.52円(98.0%)、魚肉練製品20.84円(97.9%)は比較的堅調な消費であったといえる。

   そして、もうひとつ、野菜・海藻であるが、多分に相場の影響を強く受けているといえるが、キャベツ6.52円(71.6%)、ほうれんそう 4.71円(77.2%)、はくさい1.58円(77.8%)、レタス5.13円(78.3%)、だいこん3.55円(78.0%)等が70%台と厳しい状況であった。ついで、ねぎ6.10円(87.1%)、もやし3.03円(88.7%)、ピーマン5.35円(87.8%)が80%台である。逆に、100%を超えた野菜は、じゃがいも12.52円(115.1%)、にんじん7.13円(106.3%)、ごぼう2.71円(109.1%)、れんこん1.55円(114.3%)、たけのこ3.32円(117.0%)、さやまめ 8.10円(105.5%)の6項目のみであり、残りはすべて昨対を割り、野菜全体が厳しい消費であったといえる。ちなみに、外食であるが、ハンバーガー11.87円(104.0%)以外、すべてマイナスであり、特に、中華食12.90円(83.3%)、飲酒代34.87円(86.2%)、すし(外食)37.13円(89.2%)等が厳しかった項目である。

   一方、消費が比較的堅調であったのは、対照的に果物であり、すいか5.10円(122.5%)、メロン6.87円(142.0%)、もも0.10円(150.0%)、りんご8.42円(108.3%)、キウイフルーツ5.35円(108.5%)等が果物全体の消費を押し上げたといえる。また主食的調理品も比較的堅調であり、カツレツ4.74円(115.7%)、やきとり5.87円(110.3%)、サラダ8.35円(105.7%)、天ぷら・フライ24.58円(105.1%)、しゅうまい2.81円(104.8%)、冷凍調理食品15.32円(103.5%)等が消費を押し上げたといえる。また、これ以外では、油脂・調味料の乾燥スープ5.90円(115.1%)、菓子類のチョコレート8.48円(112.9%)、飲料のミネラルウォーター7.77円(131.0%)等が110%以上となった項目である。

   このように、2011年5月度の家計調査データを見ると、東日本大震災の影響が続いているといえ、ゴールデンウィークの中、自粛ムードが消費動向に影響を与えたのではないかと思われる。特に、生鮮食品の青果、鮮魚が伸び悩み、これに加え、穀類が厳しかったことが大きいといえる。ただ、このような厳しい消費環境の中でも比較的堅調であったのが、果物、主食的調理食品(惣菜)であり、調理なしですぐに食べられる点が評価されたようである。次回、6月、そして、その後、本格的な夏場に入るが、今回の結果を受け、今後、消費がどのような方向に動くか気になるところである。
   
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July 05, 2011

アオキスーパー、2012年2月期、第1四半期、増収増益!

   アオキスーパーが7/1、2012年2月期の第1四半期決算を公表した。今後、食品スーパーマーケット業界2月度決算の第1四半期決算が続々と公開される予定であり、現時点ではまだ数社の公表に留まっている。特に、2月度決算企業の第1四半期決算には、3/11の東日本大震災の影響が反映されており、経営にどのような結果が生じたかが推し量れる。また、今期から資産除去債務に関する会計基準が適用され、その影響が当期純利益に反映されるため、その影響度もつかめる。これらを踏まえ、アオキスーパーの結果であるが、営業収益217.23億円(2.6%)、営業利益5.04億円(143.9%)、経常利益5.28億円(123.2%)、当期純利益2.22億円(162.8%)と、増収、大幅増益となり、好決算となった。

   それにしても、上記2つの影響がありながら、営業利益、経常利益、そして、当期純利益とも2桁の増益であり、好調な決算である。そこで、まずは、東日本大震災の影響を原価、経費面から見てみたい。この四半期の原価であるが、82.75%(昨年84.54%)となり、1.79ポイントと大幅に下がった。アオキスーパーの、前期本決算時が84.39%であるので、明らかに、この第1四半期は異変が起きているといえよう。結果、売上総利益は17.25%(昨年15.46%)となり、粗利が大きく改善した。それにしても、この売上総利益17.25%は食品スーパーマーケット前期決算公開企業約50社の中ではトライアルカンパニーの17.21%につぐ低さであり、改善したとはいえ、それでもかなり低い数字である。

   アオキスーパー自身は、「当流通業界におきましては、業種・業態を超えた値下げ等による店舗間競争がさらに激化しており、また、震災の影響により、一時的に商品の確保が困難な状況となるなど、厳しい経営環境が続いております。」とコメントしている。依然として、価格競争は激化とのことであるが、一方で、震災の影響により、「一時的に商品の確保が困難な状況となるなど・・」とのことであり、これまでのように商品確保ができず、特売が十分にできなかった面もあったといえよう。

   これに対し、経費の方であるが、18.38%(昨年17.74%)と0.64ポイント上昇した。原価の大幅な下落とは一転、経費の上昇が見られる。ただ、原価の下落ほど経費の上昇は見られず、結果、差し引き、商品売買から得られるマーチャンダイジング力は、-1.13%(昨年-2.28%)となり、依然としてマイナスではあるが、大きく改善した。ちなみに、前期決算時は-1.75%であるので、前期決算時よりも改善しており、原価の大幅な下落がマーチャンダイジング力を押し上げたといえよう。

   そして、これに、不動産収入、物流収入等のその他営業収入が3.54%(昨年3.29%)となり、ここでも0.25ポイントの改善が図られ、結果、営業利益は2.41%(昨年1.01%)となり、まさに、利益が倍増した。これも前期決算時は1.50%であるので、明らかに、この第1四半期は営業利益が大きく改善しているといえ、好決算となった。

   したがって、当期純利益に影響を与える今期から適用される特別損失、資産除去債務に関する会計基準の適用が、今期1.40億円(売上対比0.66%)あったが、これを相殺し、結果、当期純利益も2.22億円(162.8%)と大幅な増益となった。通常であれば、資産除去債務に関する会計基準の適用は年間分が第1四半期決算にのるため、当期純利益はかなり厳しい状況になるはずであるが、この決算を見る限り、原価の大幅改善により、これを相殺しており、その影響を結果として受けず、好決算となった。こう見ると、東日本大震災の影響は原価に反映されたといえ、アオキスーパーにとっては、大きくプラスに作用したといえよう。

   一方、財務の方であるが、自己資本比率は62.9%(前期決算時53.1%)となり、何と10%近い改善となった。その要因は、純資産は152.14億円(前期決算時151.26億円)と大きな変化はなかったが、負債が89.69億円(前期決算時133.43億円)と43.74億円減少したためである。ただし、これは、「流動負債は、前連結会計年度に比べ、46億60百万円減少し、65億76百万円となりました。これは、主に前連結会計年度末であります平成23年2月20日が日曜日にあたり、取引先への商品仕入代金や経費の支払い47億44百万円が翌日の21日になったことにより、仕入債務等が減少したことによるものであります。」とのことであり、決済日の違いによるところが大きかったといえる。したがって、大幅な増益がもたらした自己資本比率の上昇ではないが、結果として、この第1四半期決算は、財務的にも安定した状況となったといえる。

   このように、アオキスーパーの第1四半期決算は、東日本大震災により、原価面がプラスの影響を受けたといえ、大幅に原価が下がり、結果、売上総利益が向上し、経費の上昇を相殺し、さらに、マーチャンダイジング力のプラスをもたらした。これにその他営業収入のプラス面も加わり、営業利益は143.9%と大幅な改善となった。その結果、資産除去債務に関する会計基準の影響も相殺し、当期純利益が162.8%と大幅な増益となった。アオキスーパーにとって、原価の改善がいかに、経営全体に大きなインパクトを与えたかが鮮明であり、次の中間、そして、通期決算、どこまで利益改善となるか、その結果に注目である。
   
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July 04, 2011

食品スーパー2011、財務3表連環分析Vol.1リリース!

   恒例の「食品スーパー2011、財務3表連環分析Vol.1」が完成した。今年で丸3年目となり、これで、過去3年間の食品スーパーマーケット決算公開企業約50社の決算結果が揃ったことになる。特に、今年の決算は3/11の東日本大震災の影響、資産除去債務の会計基準の適用の影響を受けた3月度以降の決算企業の結果には注目といえ、今後の食品スーパーマーケットの経営戦略を占う上でも重要な決算結果である。今回は、この3月度決算以降の食品スーパーマーケットの特別レポートも加えたが、これを見ると、利益重視、キャッシュ重視が鮮明であり、食品スーパーマーケットの経営戦略に変化が見られ、今後の2月度決算以前の食品スーパーマーケットの今期の第1四半期、中間、そして、本決算の結果を占うことができよう。

   さて、財務3表連環分析であるが、文字通り、食品スーパーマーケットのP/L(損益計算書)、B/S(貸借対照表)、そして、CF(キャッシュフロー計算書)を一覧表に、特に、キャッシュを基点にその連環度合いをまとめたものである。決算公開企業約50社すべての決算を一覧すると、食品スーパーマーケットの経営とは何かが浮かび上がり、大局的に経営を俯瞰することができ、経営とはまさにキャッシュの流れであることが理解できる。

   食品スーパーマーケットの経営は、まずは、キャッシュを生み出す質が問われるが、その結果はP/Lに反映され、特に、原価、経費の関係を見ると、一目瞭然となる。原価に重きを置く食品スーパーマーケット、経費に重きを置く食品スーパーマーケット、双方のバランスをとる食品スーパーマーケットと、いわゆる、マーチャンダイジング戦略の違いが良くわかる。いずれも、キャッシュの質の向上を目指しているといえ、その質の向上の仕方、すなわち、マーチャンダイジング戦略に大きな違いが見られるのが特徴である。

   また、食品スーパーマーケットの経営は、キャッシュの質を高めるだけでは完結しない。もうひとつ重要なポイントがキャッシュの量を増やすことである。これはまさに、B/Sに表れるといえる。食品スーパーマーケットにとって、キャッシュの量を増やす方法は、唯一、新規出店のみであるといっても過言ではなく、新規出店が安定的、継続的に可能な財務内容であった場合のみキャッシュが増加してゆくことになる。そして、それがまさに、B/Sに反映されるといえる。B/Sの資産、土地、建物、敷金・保証金を見ると、食品スーパーマーケットの出店にかかわる資産がどのくらいであるかがわかり、さらに、純資産を見ると、その資産を自己資本で賄っているのか、それとも負債に依存しているのかがわかる。その差を見ることにより、出店余力が見え、差が大きいほど、今後も安定的に新規出店が可能であるといえる。

   そして、これをCFの新規出店関連への投資と比較することによって、今期、そして、今後、どのくらい、新規出店を検討しているかかがわかり、いわゆる出店意欲がこのB/SとCFの関係から判断できる。ここまで来ると、経営計画まで読み取れるといえ、財務3表連環分析は、単に経営内容がわかるだけでなく、食品スーパーマーケットの経営戦略、経営方針も垣間見ることができるといえる。

   財務3表のCFはその意味で、経営者の経営方針、経営計画を垣間見る財務諸表であるといえ、これをじっくり見ることで、食品スーパーマーケットの経営者の考え方、経営哲学、経営方針等が理解できるといえる。特に、CFの財務活動によるキャッシュフローには、配当、借入、返済、自社株式の売買状況も反映されるため、経営者が株主をどのくらい大切にしているのか、債権者にどのくらい配慮しているのか、さらには、将来的なM&Aを検討しているのかなどがわかり、CFはキャッシュの流れを知るだけでなく、食品スーパーマーケットの経営戦略を推し測る上で重要な財務諸表であるといえる。

   一般的に財務分析は難しいと思われているが、食品スーパーマーケットの財務分析は、財務3表の連環状況をキャッシュをもとに、質、量、そして、その流れを把握することがポイントであり、しかも、キャッシュの質がP/L、キャッシュの量がB/S、キャッシュの流れがCFと対応しており、誰でも、コツさえつかめば、食品スーパーマーケットの財務分析の本質は簡単に理解でき、しかも、実際の食品スーパーマーケットの経営への実戦的な応用が可能であるといえる。

   食品スーパーマーケットの決算公開企業は約50社であり、この50社の中にあらゆる食品スーパーマーケットの経営形態がある。キャッシュの質を重視する食品スーパーマーケット、キャッシュの量を追う食品スーパーマーケット、そして、そのバランスをとり、質と量の双方に配慮する食品スーパーマーケットがある。是非、「食品スーパー2011、財務3表連環分析Vol.1」を通じて、様々なタイプの食品スーパーマーケットの経営内容を把握し、食品スーパーマーケットの財務3表連環分析を行い、その経営の神髄に迫って欲しい。

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July 03, 2011

消費者物価指数(CPI)、2011年5月度、100.3%、微増!

   総務省統計局から、7/1、2011年5月度の消費者物価指数(CPI)が公表された。消費者物価指数は総合指数が3つあるが、その結果は、「(1)総合指数は平成17年を100として100.0となり,前月比は0.1%の上昇。前年同月比は0.3%の上昇となった。(2)生鮮食品を除く総合指数は99.9となり,前月比は0.1%の上昇。前年同月比は0.6%の上昇となった。(3)食料(酒類を除く)及びエネルギーを除く総合指数は97.4となり,前月比は0.2%の上昇。前年同月比は0.1%の上昇となった。」となり、いずれの総合指数も前年同月比が微増ではあるが、プラスとなった。

   総合指数が前年同月比において、3つともプラスになるのは久しぶりであり、約2年半ぶりとなる。この約2年半、前年同月比のグラフを見ると、マイナスが続いており、いわゆるデフレが継続していたといえる。それが、前月、4月度から(1)の総合指数、(2)の生鮮食品を除く総合指数がプラスになり、この5月度は、プラスとなるのか、それとも、また、マイナスに転じるか注目の月であった。結果は、(1)、(2)に続き、(3)の食料(酒類を除く)及びエネルギーを除く総合指数もプラスに転じ、すべての総合指数がプラスになったことから、今後、消費者物価指数はプラス基調が続く可能性が高まったといえよう。

   そこで、この5月度、特に、プラスに貢献した項目について、寄与度をもとに見てみたい。まず、何といっても、4月も同様であるが、たばこが0.27ポイント(4月度0.27ポイント)と、全体を大きく牽引しているのが実態である。たばこは昨年後半の値上げ以降、消費者物価指数を大きく押し上げる方向に動いており、今後とも、たばこが消費者物価を押し上げてゆくことになろう。たばこについで、貢献度の大きかった項目は0.23ポイントのガソリン(4月度0.32ポイント)、0.14ポイントの灯油(4月度0.17ポイント)であり、資源・エネルギー関連である。特に、4月度はたばこよりも、貢献度が高く、No.1の項目であった。この3つの項目が際立った貢献度の高い項目であり、これを見る限り、デフレが脱却されつつあるわけではなく、一部、異常値となった項目が全体を押し上げているという状況といえる。

   一方、この5月度、消費者物価指数を押し下げた項目を寄与度で見ると、何といっても、圧倒的にマイナスとなったのは生鮮食品であり、-0.31ポイント(4月度-0.25ポイント)であった。4月度はこれ以外にも-0.25ポイント、その他があったが、この5月度については、その他はわずか-0.07ポイントであり、生鮮食品のみが全体の物価を押し下げているといえる。したがって、これらの異常な項目を除くと、むしろ、物価は安定しているともいえ、デフレが脱却されつつあるわけでもなく、また、逆に、インフレに動いているわけでもなく、消費者物価は、むしろ全体としては、安定した状況にあるといえよう。

   そこで、ここでは、この5月度、消費者物価全体を押し下げる要因となった生鮮食品の状況を、さらに、掘り下げてみたい。消費者物価指数は、調査項目としては、ほぼ家計調査データの分類に近いといえ、生鮮食品についても、かなり細かい項目も集計されているので、何が原因かがより鮮明である。まず、生鮮食品の大分類であるが、魚介類-1.2%、肉類0.7%、野菜・海藻-8.5%、果物-3.2%であり、明らかに青果、特に野菜であることが明らかである。ちなみに、これ以外の大分類であるが、穀類-2.8%、乳卵類2.3%、油脂・調味料-0.4%、菓子類0.0%、調理食品0.7%、飲料0.1%、酒類-0.9%という結果である。穀類がやや下げ幅が大きいが、それ以外は、ほぼ0.0%に近いといえ、いかに、野菜・海藻の-8.5%が異常値であるかがわかる。

   その野菜・海藻であるが、レタス-37.7%、ピーマン-34.6%、キャベツ-31.8%、はくさい-31.3%と、この4つが-30%以上下がった項目である。ついで、だいこん-27.5%、
ほうれんそう-18.5%、ねぎ-17.9%、なす -17.4%、トマト -17.4%、えのきだけ-15.3%、れんこん-14.8%、さやいんげん-14.8%、しめじ-13.9%、ブロッコリー-13.1%、きゅうり-12.0%と、これらが-10.0%以上下がった項目である。一方、野菜の中でも上がった項目もあり、アスパラガス0.8%、かんしょ6.1%、ばれいしょ9.1%、にんじん13.1%、さといも13.6%、ごぼう17.8%であるが、数は少ないといえ、野菜全体が生鮮食品、ひいては、消費者物価指数全体を押し下げているといえよう。

   このように、2011年5月度の消費者物価指数は約2年半ぶりに3つの総合指数すべてがプラスになったが、その要因を寄与度で見ると、たばこ、ガソリン、灯油の3つであるといえ、この3つが消費者物価指数全体を押し上げたといえる。一方、消費者物価指数を押し下げた項目もあり、野菜である。ただ、先の3つの項目は、これを上回る寄与度であり、野菜が全体を押し下げるまでにはならなかったといえる。したがって、当面、このプラス基調は続く可能性が高いといえるが、消費者物価全体が上昇しているわけではなく、むしろ、全体は上昇が見られないことから、物価全体は安定しているといえよう。東日本大震災の影響も一段落したといえ、復興需要が本格化するまでは、当面、物価は全体としては大きな変動がなく、安定した状況が続くのではないかと思われる。

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July 02, 2011

日経MJで小売業10年度ランキング(第44回)を公表!

   6/29の日経MJで恒例の小売業10年度ランキング、第44回が公表された。このランキングは日経新聞が「小売業を営む店舗を持つ企業及び協同組合の1,451社が対象で、4月中旬に調査票を郵送、6月中旬までに回収した。731社から有効回答を得て、総売上高が上位500位以内にランクインしている企業について集計・分析した。」というものである。注目は、この調査票を送られた時期が3/11の東日本大震災後であり、3月度決算企業については、その影響が反映されていることである。また、この調査票では今後についてもいくつかアンケートをしており、これについては、すべての企業が、大震災の影響を考慮しての回答であり、興味深い内容である。

   さて、まずは、ランキングであるが、ベスト20位までは、大きな変動はなく、あっても順位が1つ上か下であり、ベスト20は不動の順位といえよう。そのベスト3であるが、No.1はセブン&アイHの5兆1,197.39億円(0.2%)、No.2はイオン5兆965.69億円(0.8%)、そして、No.3はヤマダ電機2兆1,532.59億円(6.8%)である。全体的に売上高が伸び悩む中、ヤマダ電機は好調な伸びである。また、このベスト3を除き、1兆円を超える小売業は2社であり、No.4の三越伊勢丹Hが1兆2,207.72億円(-5.5%)、No.5のユニーが1兆1,127.81億円(-1.9%)である。以上がベスト5かつ1兆円を超える小売業である。

   ついで、上記以外の不動のベスト20であるが、No.6:J.フロントリテイリング9,501.02億円(-3.3%)、No.7:ダイエー9,118.01億円(-6.7%)、No.8:エディオン9,010.10億円(9.9%)、No.9:高島屋8,694.75億円(-0.9%)、No.10:フォーストリテイリング8,148.11億円(18.9%)であり、以上がベスト10である。そして、No.11:ケーズホールディングス7,709.47億円(18.9%)、No.12:ヨドバシカメラ7,005.18億円(2.5%)、No.13ビックカメラ6,082.74億円(3.2%)、No.14:イズミ5,023.79億円(2.1%)、No.15:ドン・キホーテ4,875.71億円(1.4%)、No.16:ライフコーポレーション4,808.21億円(2.6%)、No.17:エイチ・ツー・オーリテイリング4,650.33億円(-1.1%)、No.18:コジマ4,494.99億円(2.6%)、No.19:ローソン4,412.77億円(-5.5%)、No.20:しまむら4,410.52億円(2.4%)である。

   このベスト20を見ると、家電の好調さが鮮明である。18.9%のケーズホールディングス、9.9%のエディオン、6.8%のヤマダ電機、3.2%のビックカメラ、2.6%のコジマといれも家電企業はプラスであり、ベスト20の中ではユニクロの14.3%を除き、伸び率ベストを家電業界が独占しているといえる。昨年のエコ需要に加え、この大震災での特需が家電の売上高を押し上げたといえよう。ちなみに、食品スーパーマーケットであるが、No.14のイズミ2.1%、No.16のライフコーポレーション2.6%の2社のみであり、売上高ではまだトップクラスは少ないといえいる。

   さらに、ベスト20以下で全体の構図を見てみると、売上高3,000億円以上がNo.40前後であり、2,000億円以上がNo.60前後であり、1,000億円以上がちょうどNo.100前後である。そして、この中に、食品スーパーマーケットはNo.40以内には先の2社を含め9社、No.41からNo.60までは8社、そして、No.61からNo.100までは16社であり、合計、No.1からNo.100までに33社である。売上高では、食品スーパーマーケット業界は小売業のベスト100の中では1,000億円から2,000億円クラスが最も多いといえる。

   そして、この調査の中で、売上高以外に様々なアンケートを行っているが、その中で、今後の小売業界の動向を占う上で、重要なものとして、価格政策へのアンケートである。見出しは、「値下げ路線からの転換」、「価格政策、維持7割に」である。特に小売業の価格政策というグラフが示され、2009年度から、2010年度の計画を含めた3ケ年の折れ線グラスを示している。これを見ると、2009年度は価格を従来どおり維持が約50%、従来よりも積極的に引き下げが約50%で拮抗していた。これが2010年度になると、前者が70%近くに跳ね上がり、後者が逆に20%強まで激減し、大きくグラフが乖離しはじめた。

   問題は来期、2011年度の計画であるが、前者はさらに増え72.5%と70%を超え、後者もさらに下がり、20%を大きく割り込んでいる。その乖離はさらに広がったといえる。この2011年度は大震災の影響を受けての各小売業の意識を表しているといえ、震災以後の小売業の最大の変化は、価格政策、特に、これまでの激しい価格競争が終息し、価格凍結、ないしは、付加価値の高い商品の強化へと、見出しにあるように、「値下げ路線からの転換」であるといえよう。この価格政策は大震災を機にというよりも、昨年から顕著になった動きであるが、この大震災でその方針が改めて追認されたといえる動きである。

   このように、日経MJ恒例の小売業10年度ランキング(第44回)であるが、ベスト20の動向はこれまで同様、不動といえいるが、20位以下ではかなり激しい入れ替えも見られ、中下位での変動が起こったといえよう。このような状況の中で、食品スーパーマーケット業界はベスト100の中に33社ランクンしており、小売業界の中ではトップは少ないが、中下位では存在感のある結果であった。また、同時に行われたアンケート調査では、特に、価格戦略についての顕著な傾向が出ている。今後、小売業界はこれまでの低価格路線から、価格維持、ないしは付加価値の高い商品強化へと入ってゆくものといえ、今後の各小売業の価格戦略に注目である。


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